どうだろう。

飯野奈津子解説委員の発言が波紋を呼んでいます。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/10921.html#more


4−5年前から飯野女史の発言には注目していました。深夜の解説で、医療事故を問う、みたいな題がありました。正直激怒しました。いったいこの人は何なんだ。冷静になって、経歴や基本的なスタンスなどが知りたくて著書を買ってみましたが、多忙で興味を失いどこかに紛れてしまいました。内容的には現場で戦ったことが無い方の理想論と感じました。


さて今回の報道ですが、メディア一般から見れば平均的な内容と思います。以前のこの人なら、もう少し露骨な嫌悪感を医療側に表明したでしょう。


飯野委員は一通り事件の概略を説明した上で「家族が納得がいく説明を受けられなかった」と医療側を非難しました。「医療は不確実で専門性が高い分野だから理解を得る努力が必要」とのことですが、おっしゃる通りそれは並大抵のことではない辛さを伴います。飯野委員も取材で胸ぐらを掴まれたり唾を吹きかけられた御経験があれば違った御意見が出てくるのかもしれません。(K医師は果たして家族への説明を怠ったのでしょうか。家族への礼を失したのでしょうか。彼は自虐的とも言うべき県報告書で責任を無理矢理認めさせられ、墓前で土下座までしています。)


次に、医療者たちが怒ったのは、逃亡や証拠隠滅の虞れの無い1年後の段階で逮捕勾留という捜査手法のことです。そこをご理解していただけなかったのは誠に残念です。医療者も公権力の前では無力であり、小生も含め数多くの医師の心を打ち砕いた「罪」をご賢察頂きたいです。


今回の件で飯野委員がおっしゃるように、刑事裁判を通じて、遺族と医療者の間の溝がさらに深まったのが事実です。医療は患者と医療者が心を一つにせねば成立しません。医療行為が多分なリスクを伴う以上、無限の説明義務を含めその責めが医療者側にかかるならば、医療側がリスクの許容範囲を相当低く設定せざるを得ません。そのゆがみは至る所に現れ、増大し続けています。医療崩壊を回避する最低条件として、個々の報道機関が状況を正確に把握して世論を正しい理解に導くことが何より必要ではないかと思います。