ベッドが足りない

ベッドが足りない。冬になってからずっと、入院患者が増えている。
今日も外来にそれなりの重症患者さんが来て、病棟に空きベッドを確認したら、
「先生の患者さんが退院したら…」とまで言われる。
退院させられるほど安定した患者はいないはずなのだが。

ご家族との退院交渉もストレス。
高齢の肺炎患者さんが退院可能な状態になっても、ご家族に「出来るだけ長くおいてください」と言われる。「3ヶ月までならいいんでしょ?ぎりぎりまで入院させてください」
こういう人たちと話をすると、どっと疲れる。時間を浪費しても、得る物がまったく無いのだ。なにか医療行為してたほうが余程やりがいがある。

脳梗塞後の患者さんの帰り先が無い。
嚥下困難でもあろうものなら、本当にどこにも行けない。
家族はみんな仕事で留守、昼間は家に誰もいない。

心ならずも胃瘻をたてて、老健の順番を待つこととなる。
年老いて食物をとれなければ消え去るのが生物の常であるが、人間は意地でもそれを認めたくないらしい。

「これから、もっと状況はひどくなりますよ」と嘆息まじりに家族に話しても、あまり深刻さが伝わらない。皆さんいつかは自分の番が来る、ということをイメージできない。

そのうちに、気がついた時に大騒ぎしても、どうしようもないのだが。

この国を消費税20%超のガチガチの福祉国家にするのか、潤沢な資金の無い人は諦めていただく米国流にするのか、そろそろ決めてほしい。
北欧の福祉国家ですら、高齢者にばんばん胃瘻を立てるようなことはしていない。