認知症について

なぜか、小生は認知症患者とかかわりが多い。
一口に認知症といっても、実に様々なタイプが存在する。
最も強烈な例では、物取られ妄想が昂じて、天井にお札を張り付けた方がいた。
天井にヤマト糊でパッチワークのように貼られたお札。
それを見て、彼は安心して眠りにつく訳である。



ここまで、認知症が社会的な理解を得る前は、介護者の苦労も並大抵ではなかった。
ある方の言葉。
「最近は、ばあちゃん(姑)が可愛く思えてきたんですよ。」
これは、自分が医者になりたての、25年前くらいだろうか。
心の底から、頭が下がる思いだった。



最近では徘徊があればケアマネが飛んでくるし
ショートステイもあるし
メマリーも抑肝散もリスペリドンもあるし
レスパイトという概念もあるし
あのころとは、隔世の観がある。


認知症の母親を撮影し続ける映画監督がいた。
ああ、その手があったかと思ったが、
いざ自分の親が認知症になって、
淡々とビデオで撮影する心境になれる方はまずあるまい
考えてみれば認知症とは非常に興味深い状況だ
思考力が均一に蝕まれるというよりは
無事の部分も結構残存している。
やはり、肉親に対する愛が動機としては大きいのだろうが
人の心の不思議さを研究する手法としては
かなり面白いと感じた。