医療崩壊の裏側

ある患者さんと話していて感じたこと。
彼は地域の病院の某専門医にかかっていて、不満を感じている。別にその医者は無気力でもないし、世間一般からみれば十分有能ですらある。努力もするし、高いプライドもある。
でも、患者さんは不満を持つわけだ。
患者さんは、決してその医者が100点満点を取りきれなかったから、不満なわけではない。別の医者がその医者を貶したわけでもない。
その医師がパフォーマンスを発揮できなかった理由はいくつか考えられる。病状について複写紙に説明を書いてもらっている。でも、患者は滾々と30分ほど私に疑問点をぶつけてきた。今の病院で外来診療で彼の相手をする余裕はとてもないだろう。
外来時間中に、突発的なアクシデントや重症の患者さんの治療に当たることもあるだろう。メディカルクラーク等の整備もされつつあるが、十分とは言えない。最大の問題点は、勤務医が使える人間は後輩の医者だけであって、看護師も事務員すら指揮系統上は別の人間ということ。病院内で医者は十分なフォローも得られず、孤独なものだ。
スタッフに患者対応の力が無ければ、手のあいた若手医師を呼んで、対応にあたらせるのが良かろうが、残念ながら、そこまで有機的に機能している病院は知らない。
こういった事を考えながら患者さんを説得して、もとの医師に継続してかかることをお勧めしてその日の外来診療は終了となった。その間ほかの患者さんは待たされるし、検査の予定も若干狂った。
誰かが悪いというわけでもない。無論患者さんが我慢すべきことでもなかろう。しかし、日本中で皆がぎりぎりのところで踏ん張って、何がしか支えられている。
医療崩壊などというものがあるのかは知らないが、かなり都合のよい解釈で誇張されているような気がする。
医学部を新設するのもいいが、現存の医者達の技量を十分発揮できるような環境を作ることを考えた方がいいと思う。