獣肉生食の起源

以前、日本には古来から生肉を食する習慣はない、と断言してしまいました。でも本当にそうなのだろうか?調べましたら、ありました。ごめんなさい。で、どういう話かといいますと、、、


明治維新前の日本では仏教の影響で獣食は遠ざけられていましたが、山間民の間では当然のように熊や鹿、キジ、ウサギなどが食されていました。むろん加熱するのが当たり前ですが、捕まえたばかりのヤツを生でガブリ、という猛者もいたらしい。

ちょっと前、イノシシ肉を生食してE型肝炎に感染した事例がありました。ある種のアニミズムでしょうが、生で食することで獣の生命力を取り込むという考え方は確かにあるのでしょう。


これに類似した話ですが、イヌイットの伝統的なビタミン補給源は、アザラシなどの生肉です。ツンドラの長い冬には野菜も果物も無いです。ビタミンC合成能のないわが祖先たちは、氷河期をそうやって乗り切ったのでしょう。西洋文明の流入によりイヌイットたちは生肉食が禁じられ壊血病が蔓延したそうですが、現在はサプリメントによって解決しているそうです。(その後は同じく流入したアルコール依存症文化が問題らしいですが。)
そう、キビヤックというのもありました。
発酵食品は、車輪に並ぶ人類の大発明と感じます。


閑話休題、日本には魚や野菜を細かく刻んで酢で味付けして食べる料理があり、これを膾(なます)といいますが、古代には獣の生肉も材料として使われたようです。膾の起源をたどると中国にあり、三国志の時代には獣の生肉を刻んで食べていたそうです。孔子も膾が大好物だったらしい。人口に膾炙(かいしゃ)する、の「膾」のことです。
これが朝鮮に伝来し、膾(フェ)になりました。仏教の影響で一旦途絶えかけましたが、儒教の一般化により復活します。
その間、本場中国で衛生上の問題からか、膾は衰退しましたが、朝鮮では生き残ったようです。
朝鮮の日本統治時代に魚の刺身が伝来し、それも朝鮮では膾と言われるようになりました。現在の韓国では、生魚料理も生肉料理も膾(フエ)と呼ばれるそうですが、肉はユクなので、続けて読むとユッフェ=ユッケになります。

これが第二次大戦後の日本で流行し、今に至るわけです。
日本人の起源はバイカル湖岸にあるという説もあるくらいですから、生肉が好きな人達には、無意識ながら太古の記憶が存在するのかもしれません。
ただ、栄養価的には他の食品で代替が可能ですので、現在、強いて獣の生肉を食する理由はありません。益よりは害の方が大と思われます。