今宵の月のように

救急車は揺れる。田舎道ではごんごん揺れる。
田舎病院で胸痛患者が来院。心電図では前胸部誘導でST上昇。
70kmほど彼方の循環器医は夜間でも引き受けてくれる。
tPAを流し、救急車に乗り込む。キシロカインやカタボン、挿管セット、携帯型除細動器は持った。酸素は十分。
来るなよ、来るなよ、今来るなよ、再灌流Vfの嵐。

こういう1時間は本当に長い。揺れまくる車上でモニターに目を凝らす。ちょっと血圧が低めだ。左心機能は大丈夫か?
いざという時は挿管して、搬送先まで心臓マッサージで持たす覚悟はある。
長い時間の後、救急車は僻地中核病院に滑り込む。二人ほどのナースと若手の医師、循環器のボスが現れる。
一通り申し送りをして、救急車に戻る。
隊員から缶コーヒーを頂く。サイレンを消して、揺られる帰り道、今宵のような月が煌煌と森々を照らしていた。



いつまでも 続くのか 吐き捨てて 寝転んだ…
涙も出ない 声も出ない
もう二度ともどらない日々を 俺たちは走り続ける…


http://jp.youtube.com/watch?v=WEeMCKFGK-Q



ようつべの貼り方がよく分からん。