その場のぬるい空気、むしろどうしようもない

ある田舎病院の話。
都会から来た医者が「あまりの診療レベルの低さに」切れたらしい。
彼の論理からすれば、怒りはどうしようもない僻地を啓蒙し、改革する善行であった。

でも、現実は何も変わらなかった。常勤医は10年来の治療を継続し、患者側も納得する。
その病院を受診するはるかに多い数の患者が、都会に流れているのかもしれない。


逆説的だが、田舎での診療とは、都会に逃げられない人のためのものであって、最新レベルが必要ではない。
田舎で高度な医療を行い、人を呼ぶには限界がある。最新鋭の医療機器に投資してなんとかペイできるほど状況は甘くはない。
ましてや田舎の医者は何でも屋。年を追うごとに朽ち果てていく運命にある。少数の例外を除けば。


「都会からのいちげんさん」が怒り通り越して田舎の常勤医に「死ね!」「医者やめろ!」って言ったところで僻地の医療が良くなるはずがない。

だって、彼らが辞めたら僻地の医療は終わるのだ。

かの暴言は、都会の若い医者が、抱え込んだストレスを発散しているだけのように思う。



都会では、10年経てば町も変わり、人も変わる。
僻地では何も変わらない。