小児科無料化で起きること

夜の当直で「にわか小児科医」をだいぶしてきた。
周辺の小児科が吹っ飛んで、内科当直をしながら、一晩10人から20人くらいの小児を診る。当然1時間おきに起こされ、一睡も出来ない。
夜間にくる小児は、薬を出せば終わりではない。大概の患児は昼間開業医とかを受診して、薬を貰っている。でもよくならないと、夜間当直の内科医にかかる。
だいたい、風邪で熱が出たとして、薬を1回飲んで数時間経ってなおるはずも無い。ひどいのになると昼間出された薬さえ飲んでない。
前医の薬の内容も分からないし、自分よりはるかに経験のある専門医の診断とか治療にどうこう言えるはずも無いし、不安を抱えた親の期待に応えられない。医者としてフラストレーション溜まる一方。

親は、内科当直医に専門的な(緊急性の乏しい)質問を投げかける。
自家中毒症ってなんで起きるんですか?」「昼間に来て、小児科専門医に聞いてください」
いや、最近この分野、進歩が激しいんですけどね・・・
金髪の、ズボンに鎖をじゃらじゃら鳴らしたお父さんが腕を組んで睨みながら仁王立ちしている。点滴するから廊下に出て下さいというと、文句を言う。救急車に対応していたら、待ち時間が長いと激怒する。

小児科の専門医を呼んでもノラリクラリで、板挟み。病院まで30分かかるところに住んでいると、そうそう呼べない。おかげさまで、3−4歳くらいまでは点滴出来るようになった。
6ヶ月の患児の件で夜中に小児科医にコールして、電話口で怒鳴られたこともある。

それもこれも、無料化が悪いんだと思う。ハンバーガーとステーキがどちらも無料なら、たいていの人はステーキを求める。それが当たり前になれば、無料でフルコースが出ないのはおかしい、となる。そもそも小児科医がいない。なけなしの小児科医を酷使してさらに減る悪循環。
政治の人は現状を見ずに、少子化対策と言って、無料化する。
地獄への道は善意で敷き詰められている。

まあ、患者さんに見識とか、良心を求めても仕様がないのだと思うし、一人目の子供がちょっと熱を出したら正常な判断などできないのだと思う。唯一の救いは、そうしてくる患児に重症がほとんどいないことだ。

あ、肺炎とか、ちゃんと診断してますからね。

ただ、それがいつまで続くかは分からない。いつかは地雷を踏み抜いてしまうかもしれないし、寝不足で昼間とっちらかるかもしれないし。
せめてもの願い。昼間は無料で、夜間3倍付けにしてくれい。

夜間小児科にかかる前に見てくれい。
http://www.kodomo-qq.jp/