医師は魅力の無い職業なのだろうか

時々そう自問しています。
多くの医師が、子息を医師にしたくないと言います。
つまり、医師という職業は、社会的地位、収入等のメリットと、その職務内容を比較すると、必ずしも
良い職業ではない、ということになります。
それでも医学部人気はとどまる事を知りません。


自分自身、もし医師になっていなかったらどうだったか?想像もできません。
医師にならなければ良かったのか?
あるいは、医師より他に、(そんなものがあったとして)自分の才能を開花させる職種があったのでしょうか?


自分自身、今まで生きて来て、あまり後悔はしていません。高みを目指し、道半ばに倒れるのは本望、と思っていました。
むしろ、自分が医業を曲がりなりにもやってこれた、それは多くの人の教示と助けによるものです。
その人達の期待を裏切ったことに、忸怩たる思いです。
しかし、息子達はどんどん大きくなりますし、米代や教科書代を必要とします。
幸い、幾ばくかの蓄えがありますし、若干の技術はあります。
「手に職はある」わけで、仕事には困りません。


おそらく、医学部の定員が増え、医者が増えてくる10年後には、自分のような中途半端な人間は淘汰される運命にあるのでしょう。それでも後悔はないです。世間一般では、その年代で職は極めて限られている訳で。


何故苦しく、自分の時間もなく、命をすり減らしながら仕事を続けられるのでしょうか?多分、自分の手が出来る事、その素晴らしさに魅了されているのでしょう。死の淵にいる人を呼び戻す。ステージ4の癌患者さんの進行を一時的に止めることができる。もしかすると、今まであきらめていた患者さんを救う方法が出てくるかも知れません。今ここで戦線を離れる事はしたくない。昨日まで小生もそうでした。

その道程で犠牲者は出るかもしれません。患者さんにも、医者にも。その悲しみに鈍感になることが、現場に留まるコツの様な気がします。



昔ある小説で、バス運転手になりたい子供に、東大を出てバス運転手になれ、と説く親がいました。
医学部卒の運転手、証券マン、農夫、漁師、、、素敵じゃないですか。きっと分子生物や生化学の知識は、彼らの人生を豊かにしてくれることでしょう。
共産主義国家では、給与水準は医者<トラック運転手、だったそうですし。


それにしても、現在医師に要求される事柄は結構過酷なんですけどね。
医師は公金で養成された公共財だそうです。
ならば、せめて労働基準法の遵守を徹底するくらいのことはしても悪くはないと思うんですけどね。